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岩手県立中部病院泌尿器科の川村竜也です。
3月17日、18日に大宮で開催されました『第13回腎臓リハビリテーション学会学術集会』に伊藤明人先生と一緒に参加してきました。
今回、伊藤先生にご指導頂きまして、『当院慢性透析患者における腎臓リハビリテーションの経験』をオーラルで発表して来ました。発表後は自分の経歴の珍しさからか何人かの方に声をかけていただき、親睦を深めることができました。
腎臓リハビリテーションとは、腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響、息切れや疲れやすさなどの症状を軽くし、生命予後の延長、心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として、運動療法、食事療法と水分管理、薬物療法、教育、精神・心理的サポートなどを行う、長期にわたる包括的なプログラムを言います。
今までは点数加算が取れなかったのですが、令和4年度の診療報酬改定で、『透析時運動指導等加算』という、透析時に運動療法(腎臓リハビリテーション)を行うことで加算が取れるようになりました。全国的にもこの加算が取れるようになってから積極的に腎臓リハビリテーションを取り入れる施設も増えているようです。
中部病院では2020年から伊藤先生の指揮の下、腎臓リハビリテーションを行っており、2023年2月から上記の透析時運動指導等加算を取っています。
まだまだ岩手県では馴染みの少ない腎臓リハビリテーションですが、今後もっと普及していければと思います。
岩手県立中部病院伊藤です。
前立腺は男性特有の臓器で膀胱のすぐ下にあります。
早期の前立腺癌は多くの場合自覚症状がなく血中PSA値を測定し、基準値(50-64歳:3.0ng/ml, 65-69歳:3.5ng/ml, >70歳:4.0ng/ml)を超える場合は精密検査(針検査)を受けることが推奨されています。
天皇陛下も2022年11月に組織検査を受けられておられますし、上皇陛下も平成15年に1月に東京大学医学部附属病院でご手術を受けられておられます(宮内庁HPより)
2021年の部位別がん罹患数は男性は前立腺癌が9万4748人(16.7%)と最も高くなっている一方で、部位別がん死亡数は1万3217人と肺癌(5万3278人)、大腸癌(2万8080人)、胃癌(2万7196人)と比べ低い傾向にあり、これは前立腺検診が広く普及し検診での早期発見が可能になっていることが大きく関係してます(公益財団法人日本対がん協会HPより)
また治療技術も大きく進歩しstageⅢ期までの想定生存率はほぼ100%となっています(国立がん研究センターがん情報センターより)。
前立腺癌に対する治療法は当講座HPの「代表的な疾患の治療法」にも紹介されていますが、大きく分けると手術(根治的前立腺全摘除術)、放射線治療(強度変調放射線治療:IMRT、密封小線源療法)、粒子線治療、薬物治療などありますが、今回ご紹介したいのは放射線治療であるIMRTです。
IMRTは治療装置を移動させて照射を行いマルチリーフコリメータにより照射野の強度が変調されたビームを重ねて不均一な線量分布を作成することができ、腫瘍の形状に合わせた高線量と周囲臓器への線量を抑えた照射が可能です。
現在広く普及し、岩手県内でも岩手医科大学附属病院、岩手県立中央病院、岩手県立中部病院、岩手県立磐井病院などで受けることが可能です。
従来の放射線治療より副作用が少ないことが特徴ですが、照射野が前立腺全体になるため、前立腺の周囲の臓器(膀胱、直腸)へ放射線が一部当たることにより放射線膀胱炎、放射線直腸炎が生じてしまいます。
特に放射性直腸炎は下痢や血便、腹痛などを生じることから、放射性直腸炎を低減する処置として直腸前壁を前立腺から離すめに用いられる合成吸収性材料であるハイドロゲルスペーサー留置術が2018年6月より国内でも保険適応となりました。
この処置を行うことで、直腸が前立腺から離れることで高線量域が直腸に照射されることを防ぎ、直腸の副作用を減らすことができます。
医師側は事前講習を受けた後に複数回の実地処置を行うことでcertificate(証明書)を取得する必要があります。
岩手県内では現岩手県立釜石病院の石井科長が普及に尽力され、私も石井科長から直々に”石井式spaceOAR虎の巻”を伝授していただき、岩手県立中部病院でも2022年4月より前立腺癌に対してIMRTを選択される患者様に対してspaceOARの処置を1泊入院で行っています。
また今年度は当院から3名の若手医師がcertificateを取得することが出来ました。
今後も岩手県内に広く”石井式spaceOAR虎の巻”を普及させ、より安全な前立腺癌治療を多くの方に提供していきたいと思います。
岩手県立中部病院二年次研修医の井藤です。
10/27から10/30に開催されました第87回日本泌尿器科学会東部総会に北上済生会病院薄先生とニ年次研修医の野崎先生、一年次研修医の熊坂先生、鈴木先生と共に参加させていただきました。
今回は薄先生、伊藤先生にご指導いただき、「アベルマブによる免疫チェックポイント阻害薬が著効した尿管癌の一例」について、ポスター発表させていただきました。
アベルマブは現在根治切除不能な尿路上皮癌に対し一次化学療法後の維持療法について認可されている薬剤になります。
アベルマブは約40%の患者様に対し病勢のコントロールが見込まれ、その中でも約6%の患者は完全奏効(CR)に至るとされています。
今回は比較的珍しいアベルマブによってCRを得た症例を経験したため報告させていただきました。
指導医の薄先生、伊藤先生には貴重な時間を頂戴し、有意義な学会にできたと私自身感じております。
研修医期間において最後の学会発表になりましたが、研修医2年間を通して、岩手腎不全研究会、東北地方会、今回の東部総会と三度に渡り指導していただき大変有り難く思っております。
また岩手医大五十嵐先生にはお忙しい中PD-L1などの免疫染色をしていただき、考察に厚みが増しました。
小原教授、五十嵐先生を始めとした、当講座のスタッフの方々に深くお礼申し上げます。
今後も当講座で精進して参ります。
岩手県立中部病院泌尿器科伊藤です。
2022年1月20日-21日にweb/ZoomでBSJNU(Baxter Scientia Jalan at Nagoya University)基礎コースに参加しました。こちらは名古屋大学腎不全システム治療学寄附講座が事務局になり腹膜透析の啓発をされているもので阿部教授の推薦をいただき参加しました。
今まで腹膜透析は臨床で診療、手術を行ってきましたが座学で勉強する機会がなく非常に貴重な機会になりました。黎明期から日本の中心で腹膜透析を牽引している東京慈恵会医科大学の川口良仁教授のお話を始め、腹膜透析分野のトップランナーの先生方の話を実際に聞くことが出来ました。またZoomではありますが、直接日常臨床で悩んでいることなどを相談することができ、貴重な機会でした。特に白報会王子病院の窪田実院長の腹膜透析カテーテル留置術のお話では、日頃行っている手技は様々ある手技の一つにすぎず、患者の体格や生活習慣などに合わせて変えることができることは衝撃を受けました。泌尿器科の自分としては一層の努力が必要であると改めて身に染みました。
現在日本における透析の約97%は血液透析のため一般の方の認知度が低く、腹膜透析は患者数が少なくなかなか岩手県含め国内で血液に比較して普及していないのが現状です。
腹膜透析は毎日在宅で行う治療ですが、利点は患者さんの自由度が高いことです。通院は月に1回のため現在の社会生活を可能な限り維持することもできます。また血液透析と異なり在宅で行う治療のためこの接触をできるだけ避ける新型コロナウイルス感染症の時代において重要度が高まってくると考えます。現在は高齢の方より若い方が選ばれる傾向にある印象ですが、認知症の発症リスクも血液透析より腹膜透析の方が少ないという報告もあります。岩手県は本州一の面積を有するため高齢になるに従い通院が徐々に大変になってくる方なども含めて今後は高齢の方に腹膜透析はいい選択肢になると考えます。
患者、家族に対してよりよい腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)を説明、提供するためにはまずは医師を始めとする医療従事者が腎代替療法の利点、欠点を十分に理解する必要があります。今後は岩手県内においても腎代替療法の理解、知識、経験の啓発を進めていければと考えます。
岩手県立中部病院一年次研修医の井藤練刀です。
COVID19の影響で約2年間開催できずにいた、日本泌尿器科学会ウィンターセミナーが
令和4年1月22日〜23日にかけて開催されました。
今回の開催はウェブとライブのハイブリッド形式であり、私は感染対策を十分行った上で
現地で参加させていただきました。
初日は腹腔鏡手術の練習、ロボット支援下手術のシミュレータに始まり、全国の若手泌尿器科ドクターによる
泌尿器科という学問の面白さ、働きやすさ等の公演を拝聴しました。
普段はなかなかお聞きしにくい内容なども赤裸々に語っていただき、
泌尿器科にとても興味を持つきっかけになりました。
2日目は泌尿器科のキャリア形成、働き方を中心とした公演を拝聴しました。
最後に行われた恒例行事のウロリンピック2022では泌尿器科に関わる
クイズの正解率を班毎に競うといったものでした。
(お恥ずかしながら、楽しみすぎてしまっていたかもしれません。)
ウロリンピックでは全チームの中で2位という大変ありがたい結果をいただきました
(写真はその時のチームで撮影したものです)。
仕入れたクイズを1つ紹介させていただきます。
最近流行りの前澤さんでお馴染みの宇宙旅行中に発症率があがる泌尿器科的疾患は何か。
答えは尿管結石でした。重力の影響を受けなくなるため、骨からCaが漏れ出しやすくなるそうです。
少々蛇足でしたが、日本泌尿器科ウィンターセミナーの楽しさ面白さが伝わっていたら幸いです。
さて、心に残っている言葉を1つご紹介させていただきます。女性の先生のお言葉です。
「私は今から初期研修医をやり直したとしても、泌尿器科になります。」という言葉でした。
研修医のうちは出来る事が限られており、真の泌尿器科の深みを知るのは不可能だと思います。
そんな中、泌尿器科の深みに触れた上での「また泌尿器科になる。」という言葉は
僕ら初期研修医の背中を押してくれるものでした。
最後に、このような貴重な機会を与えてくださいました、日本泌尿器科学会理事長の野々村教授、
福島県立医大の小島教授を始めとした運営に携わって頂いた先生方に感謝申し上げます。
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