私は平成31年5月から6か月、岩手県内でのウロギネ診療の確立、特に腹腔鏡手術の技術習得を目的とし、千葉県鴨川市にある亀田メディカルセンター・ウロギネ・排尿機能センターで国内留学という形で研修をさせていいただきました。
ウロギネコロジー:Urogynecology(以下ウロギネ)とは、泌尿器科と産婦人科の境界領域にある疾患を対象とした診療科です。子宮脱・膀胱脱・直腸瘤などの骨盤臓器脱や尿失禁、頻尿、夜間頻尿などの排尿のトラブル、便失禁や直腸脱などの排便のトラブル、膣の違和感などが挙げられます。欧米ではウロギネは診療科として確立していますが、日本ではウロギネを専門治療とする医療機関はまだ少ないのが現状です。
同センターは野村昌良先生をはじめとする泌尿器科医5名、専属の理学療法士とアシスタント、私たちフェロー(国内外からの留学生、産婦人科医・泌尿器科医)5~6名がチーム一丸となって診療に取り組んでいます。
本邦で最多の手術件数で、LSC,TVM,TVT,膀胱水圧拡張術などを週20-30件、1日に10件の手術をおこなうこともあり、半年間で多くの手術を経験することができました。
私は、特にLSCに取り組みました。LSCは繊細な剥離や運針が随所にあり、もっとも難しい腹腔鏡手術のひとつです。当初、腹腔鏡手術初心者だった私にとっては、すべてが困難に感じました。しかし、ウロギネ科の先生方や先輩フェローからご指導のお陰で少しづつではありますが上達することができました。最初の1カ月程度は、第二助手として手術に入り経腟操作を習得します。手術のない日には、手術ビデオを何度もみて手順を覚えイメージトレーニング、ドライボックスで運針・縫合・結紮などの練習を繰り返します。2か月目からは助手、3カ月目からは術者の機会をいただけるようになりました。手術を経験するうちに感じたことは、腹腔鏡手術は、術者の技量だけでは成り立たたないということです。特にLSCは、助手はただカメラを持つだけではなく、その場に応じた適切なテンションで組織を把持し術野を展開すること、第二助手は適切なテンション・適切なタイミングで経腟の操作を行うなど、チーム全員が手術の手順を把握し共通認識を持つ必要があります。私は、亀田ウロギネでの手術を通して、LSCに限らずどの腹腔鏡手術に共通する重要なことを習得できたと確信しています。
また同センターは、手術だけでなく臨床研究や学会発表にも力を入れており、野村先生のご指導のもと、第21回女性骨盤底医学会では発表の機会をいただきました。9月には44th International Urogynecological Association (IUGA) Annual Meetingに同行させていただき、世界のウロギネの現状や他国での手術手技を知る機会を得たのは、とてもおおきな収穫でした。
半年間の留学で得た知識・技術を今後岩手県内での診療にいかすべく、引き続き精進してまいります。最後に、野村昌良先生をはじめ厚くご指導くださったウロギネセンターの皆様、留学の機会を与えてくださった小原航教授をはじめ、理解を示してくださった医局の先生方・盛岡赤十字病院のスタッフの皆様に感謝を申し上げます。
国際色豊かなウロギネセンター
朝7時カンファランス 英語でデイスカッション
IUGA(国際ウロギネ学会)に同行 海外でも存在感のある野村先生